目が覚めたら再び学生になっていた
春。
色々あって私は再び学生となっていた。
……。
色々あったなあ……。
あったあった……。
具体的にいうと就職したのち暗黒面に落ちて退職し、
しばらくフリーターやって大学院に入ったということなのだが、今となっては全ては長い夢だったようにも思える。
この日本に、自分の仕事を楽しんでいる人間がどれほどいるのか。
「たぶんスキップして、職場来てる人はまあいないと思うんだよね。辛い思いする対価にお金もらってるってのはあるよね。」
前職の部長の言葉を思い出す。
しかし、フリーターという身分だったころの私は(つい最近のことだが、、、)仕事というものを心から楽しいと思う瞬間が何度もあった。
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バイト先の社長はとても理不尽なことをいう悪いおじさんで、
私が働いている間に辞めていった仲間たちは両手両足の指ではおそらく数えられない。
初出勤から3日以内で辞める社員などザラである。
職場環境があまりに酷いので、とうとう社長以外はバイトの学生だけになってしまった。
そんな環境でも、私は自分でもびっくりするほどの充実感を得ていた。
バイトなど最高でも3か月程度しか続いたことのない私が、正社員だった銀行も2か月で辞めた私が、
ゆうに8か月以上は働き続けている。
この過酷な環境で生き残り、日々技術を身に着けていく手ごたえ。
そして初めて感じる「出勤が全く苦ではない」という感覚。
バイトを始めた当初こそ、行きたくなさ過ぎて出勤時に「物理的に後ろに引っ張られている感覚」
を覚えることもあったが、4か月も経つ頃には「ういっす☆」みたいな感じで出勤することが可能となっていたのだ。
単純にプログラミング・AI開発という作業が楽しかったというのも大きい。
しかし、最大の理由はまた別にある。
おそらく、職場環境があまりにも崩壊しすぎていたのが逆に幸いしたのである。
私の関わっている案件の先輩はだいたい退職したので、基本的に私が自由に仕事を進めることができた。
誰からもガタガタ言われない環境。
無論社長だけは割とガタガタ言ってくるのだが、社長自身あまり技術を分かっていないフシがあるので、
けむに巻くことはそう難しくはない。
そして社長という共通の敵により、バイト同士の結束はとても固いものになっていた。
……思えばバイト先で友達ができるのは初めてだった。
学部時代にやったバイトでも面白そうな人がいたこともあるのかもしれないが、
何せ私が速攻で辞めるので、ついぞ交流がうまれることはなかった。
友人と好きなことをできるのは間違いなく幸せだったといえる。
そして、大学院に入った今、私のQOLは何かこう、急降下した感がある。
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新しい環境のストレス。
大学というところは意外と秩序が存在して、研究室やら、指導教員やらで色々な不安感がやばいのである。
正直客観的に考えるとそんなヤバそうな人もおらず(むしろ皆いい人そうである)、
ストレスを感じること自体が無意味である気もするのだが、ただただ不快は質量をもってそこに存在する。
最近私が、「一旦大声でウソ泣きした後、急に鼻歌を歌いだすことで、マンションの隣人を威嚇する」という奇行にでざるを得なかったのも、
全てはこの不快が原因である。
もはや、私は一般的な社会秩序では生きられないのだろうかと思う。
……別に何をやらかしたわけでもない。
それは、単に魚が陸で生きられないことと近いのかもしれない。
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今住んでいるマンションは、小学校の通学路に面しているようで、朝は子供たちの楽しそうな声が聞こえてくる。
毎朝登校する彼らには(そして小学生の時の自分にも)畏敬の念を抱いていた。
……のだが、最近ちょいちょい泣きわめく声が混じっていることに気づく。
どうやら学校(or幼稚園)に行きたくないヤツらも相当数いるらしい。
泣きわめく子供とブチ切れる大人(親だろうか)。
しかし冷静に考えると出勤・登校という概念を持つ動物は他にいるはずもなし、
それらの苦を苦しいと感じるのは生物にとってごく自然なことであろう。
「苦しい時に泣きわめける」彼らはある意味で恵まれてはいる(大人になってくると辛さを表明できない、という新たな辛さが登場する。
また辛い時に辛さを自覚できないこともよく起こるようになってくる)。
しかし、まあ辛いものは辛いもので……。
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初めに、皆仕事なんてしたくないでしょ!と書いたが、
実は本当の意味で仕事をしたくない人はほとんどいないんじゃないかとも思う。
だって何もせず家にずっといるのも結構しんどいし。
嫌なのはむしろ、誰かにペコペコすることだとか、何の意味も見いだせない作業だとか、
規律に縛られることとか、クソみたいな人間関係だとか、そういう「仕事」以外の部分でしょ。
大学院にいる間、もちろん研究もやるが、そういう不快なものたちから離れて仕事ができないか本気で追及してみたい。
ここ最近は少しずつその為の準備をしていた。
もうすぐ何か手を打てるかもしれない。
まそれはさておき、長くなってきたので最後に言っておこう。
マジで最近辛くて駆け込み寺みたいなの欲しい。
(終わり)