東大卒が体験したうさん臭い儲け話の裏側~投資編~
最近、ツイッターでいわゆるビジネスアカウントにフォローされることが多くなってきた。
「行動するかしないかはあなた次第」
「一度仕組みを作ってしまえば勝手にお金が振り込まれます」
「素晴らしい仲間に出会って人生変わりました!!」
みたいなことを言っているアレである。
(それにしても皆、現金の写真と肉を食いに行った写真を投稿しているのは不思議である。そういうマニュアルでもあるのだろう)
思えば退職してから半年。
ぶっちゃけ私の中では自分の銀行時代の苦痛がどうだったとか8割方どうでもよくなっている。
今の私には、これからどう金を稼いでいくかという方が重要なので、胡散臭い(失礼)ビジネス系アカウントにフォローされるのはむしろ本流かもしれない。
実際、私もここ最近不労所得を得る方法を個人的に探してみた。
このシリーズではその中で見つけた(けど上手くいかなかった)方法を色々と紹介していきたい。
ネットのあちこちで見かける情報商材。
おそらくあの手の情報商材はこういう手法を紹介しているのではないかと思う。
ということで第一回は、
投資でノーリスクで儲ける方法
を紹介する。
ちなみにこれは、私が大学4年時、卒業間近であまりにも暇すぎて筋トレ以外にやることがなかった時、バーベルを担いでスクワットをしている時に思いついた手法である(どうでもいい)。
……投資でノーリスクで儲ける、というといかにも胡散臭すぎるが、実はそういう手法も全くない訳ではない。
皆さんはこういうことを考えたこことはないだろうか。
「あれ、1000円で何でもいいから株を買って1500円になるまで放置しとけば絶対儲かるんじゃね??」
株じゃなくてFXでもなんでもいい。
とにかく価格が変動する資産に投資して、価格が上がるまではテコでも売らない。
そうすれば絶対に儲かるのでは??
もちろんこれは間違っている。
なぜならば、1000円で買った株が永遠に1500円に上がることはないかもしれないし、もし上がったとしてもそれが150年後とかだったら意味がないからだ。
上がらないならまだしも、株の場合はその会社が倒産すれば価格は0同然(実は厳密には0にはならないらしい)になり、以降永久に復活はない。
価格の上昇が完全に保障されている状況下でこそ、先述のロジックは成立するのである。
もちろん価格の上昇が約束されている株など存在しない。
企業の未来には何が起こるかわからない。
いやもし、企業の将来が分かったとしても同じこと。
もし仮に値上がりが分かっている銘柄があれば、みんながその株を将来的な価格に一致するまで買っていくため、将来の価格はもうすでに実現しているはず、とも考えられる。
私はジムでバーベルを上げながら考えた。
何か100%とまではいかなくても、それに近い精度で価格変動が約束されている投資対象はないものか……。
筋トレにおけるスクワットというのは、意外と息が上がる。
本格的なトレーニーではない私はあまり高い負荷をかけないが、それでも息が上がるのだ。
トレーニングを終えてぜいぜいしていると、ふいに閃いた。
……ある。
厳密には「もの」ではないが、値段の動きがほぼ間違いなく予想できる投資対象は存在する。
あんまりもったいつけてもあれなので、ずばっと言ってしまうと、私が思いついた投資対象とは、「価格差」である。
……どういうことか。
例えばコンビニAであるボールペンが100円で売ってたとする。
そしてしばらく町を散歩してからコンビニBに入ると同じボールペンが150円で売ってたとする。
そこでずる賢いあなたは考えるわけだ。
「あれ?さっきのコンビニで100円でこのペン買ってきてこっちのコンビニのオーナーに売ればもうかんじゃね??」
株を始めとする金融市場でも同じことが言える。
この場合、ある金融商品が市場Aで150円、市場Bで100円で取引されている場合、A市場でこの商品を売り、B市場でこの商品を買っておく。
そして価格差がなくなった時にA市場でこの商品を買い戻し、B市場で買った商品を売れば、商品の値動きには関係なく50円儲かる。
そもそも同じものが違う異なる価格で売買されるのは不合理なので、存在した価格差はいずれは解消されていく確度はかなり高いのだ。
くどくど説明したが、これは「裁定取引」または「アービトラージ」といって投資経験者または、金融関係者にとっては常識である。
……問題は、価格差が生じている投資対象があるかどうかだ。
ちなみに株は取引所が違っても価格は同じである。
ではFXは??
一説によるとできなくはないっぽいが、これを行うとアカウントが凍結されたりすることが多いらしい。
何より私は為替に関してはあまりにも無知だ。
所詮、絵に描いた餅か、、、。
その時、筋トレを終えタンパク質を補給するためにファミ〇でサラダチキンをレジに持って行った私の脳に第二の閃きが走る。
仮想通貨でやればいいのだ!!
当時、仮想通貨ブームは若干の翳りが見え始めたころだったが、まだまだ価格は1ビットコイン120万円くらいあった(現在は40万円。こわすぎる)。
まあ仮想通貨の値段自体はどうでもよくて、重要なのは、仮想通貨の取引価格は取引所によって違う、ということである。
取引所Aではビットコインが120万円、取引所Bでビットコインが110万円で売られているという状況があれば、
①取引所Bで110万円でビットコインを購入。
②購入したビットコインを取引所Aに送る。
③取引所Aで120万円で売却。
という流れを踏めば確実に10万儲かるではないか!!
筋トレ後はハイになりがちなので、私のテンションはMAXになった。
家に帰って、実際の取引所の状況をリサーチした結果、以下のことが分かった。
①実際に仮想通貨取引所間に有意な価格差は存在する。
②ビットコインの送金には時間と手数料がかかる。
①はうれしい知らせだったが、②には困った。
送金時間がかかればビットコインの価格など速攻で変化してしまうし、送金手数料が生じれば、もとが取れるだけの価格差が生じる機会が来るまでめっちゃ待たなければならない。
しかし、この問題を解決するのは簡単だった。
例えばこういう状況で考えてみる。
取引所Aと取引所Bでどちらもまずビットコインを50単位買っておく。
価格が
AーB=10000円
となったとき、まずAでビットコインを1単位売却し、Bで1単位購入する。
その後、
A-B=5000円
くらいまで価格差が縮小した時に反対売買(今度はAで1単位購入、Bで1単位売却)すれば
10000円-5000円 =5000円
儲かるということだ。
これならやはりビットコイン自体の値段は上がっても下がっても利益が出る。
ただ、この方法だと取引所を全部合わせて常に合計100単位のビットコインを所持することになるので、裁定取引では利益がでても、ビットコインが暴落すれば資産価値も暴落してしまう。
この問題も致命的かと思われたが、結論から言うと何とかなった。
それはビットコインの空売りができる取引所が存在したからである。
空売りについてはここでは詳しくは説明しないが、要するにビットコインを持ってなくても、まずどっかから借りてきて売却し、一定期間後に買い戻してはじめ貸してくれた人に返却する、という売買方法である。ちなみにこれは株とかFXとかでもできる。いわゆる信用取引というやつだ。
空売りしている間はビットコインの所持量がマイナスとなり、別の取引所で普通に同量のビットコインを買い持ちしているなら合計のビットコイン所持量がちょうど0になり、本当の意味でビットコイン自体の価格変動の影響がなくなる。
しかも、少し制約はあったが、空売りが実質手数料0で出来る取引所Aと、普通に現物を購入する時の手数料が0の取引所Bは存在した。
ついでに、ネットを調べると、これらの取引所ではpython(プログラミング言語の一種。私はこれ以外書いたことがない)による高速売買プログラムを楽に書くことができた。
こういうと凄そうだが、当時私はガチのpython初心者で、経験もほぼ0だった。
ただpythonという言語は本当に神で、初心者でもなんとかなるようにネットの人がいろいろなプログラムを公開してくれてたりと、まあ色々あるのである。
あとは、取引所自体がそういうプログラム売買支援のためにサポートしてくれていたのも大きい。
ーーーーーーーーーーーー
これらのツールを用い、過去データでシミュレーションを行ってみた。
(数分もしくは数秒単位で取引を行う必要があるので、そのためのデータを集めるプログラム自体を組む必要があったが、この時はウキウキでラりっていたので全く苦ではなかった。)
すると結果は……
なんと10戦10勝であった!!
確信を得た私は実際に裁定取引プログラムを走らせて仕事に向かった(色々やってる間に東大を卒業していた)。
あの日のドキドキを、期待と不安を今も思い出す。
何せ、シミュレーションでは数万円の元手からこのゲームを始めても、一年後には数千万円になっているのだ。
新卒一年目で7000万プレイヤーだぜ!!!!!
当時の私の目は完全にイっていたと思う。
ーーーーーーーーーーーーーーー
家に帰ってPCのモニターの電源をつけた私の感想。
若干損してる……。
なんで??
想定では数万の利益がでているはずが、なんと数百円の損失がでていたのである。
理由はすぐにわかった。
取引所がプログラムの注文に反応するのが遅いのである。
こちらのプログラムが
「ビットコイン買いまっす!」
と注文を出しても、取引所は何も反応しない。
そしてもう絶対買うべきではないというタイミングになってから、
「よっしゃ!!売ったるで!ありがとうな!!」
と返事をするというとにかく腹立つやり取りが繰り広げられていたのである。
言うまでもなくアービトラージ取引ではタイミングが重要。
現実の売買ではスプレッド(売る時と買う時の価格差)があるので、遅くても数秒、十数秒といったよりシビアな売買タイミングを要求されるのである。
しかもこれは、完全に取引所のシステム応答の問題なのでこちらにはどうすることもできない。
価格差がかなり開いた時だけ取引する、という風にすればある程度の小銭はかせげるのかもしれないが、リスクが大きすぎた。
サーバーの応答が特に悪くなるのは取引が殺到した時、つまり重要な時だ。
もし買ったビットコインだけ売れないまま価格急落、ということになれば取り返しがつかない。
高い確率で儲かるが損した時のリスクがでかい、ということならデリバティブでもやっておけばいいのだ(興味がある人は「オプション 売り」とかで検索してみるとよい)。
こうして私の野望はついえた。
卒業式の日、初めて入った安田講堂で私は壇上で話しているおじさんの話も聞かずにこのことばかりを考えていたのに。
一体あのおじさんは誰だったのだろう。
今回の裁定取引は色々と応用できるにはできる。
聞くところによると、海外の賭けサイトを使い、結果がどう転んでも儲けが出る、とった手法を使う人もいるらしい。
そしてそういうことを教える情報商材や、セミナーなんかもあるとかないとか。
私は火傷するかもしれないリスクを承知で、そういうセミナーとかに手を出して見るのに別に否定的ではない。
それはそれで面白いかも、とすら思う(とはいってもあまりお勧めはしないが)。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これから定期的にこういった儲け話にチャレンジした(そして失敗した)話を書いていこうと思う。
また、これを読んだ人で、自分も危ない儲け話に乗っかて上手くいったり失敗したりした過去があるという人はTwitterなりメールなりで連絡していただけると嬉しい。
ということで。
では、また。