【自分語り】飲みサーの思い出、その2
前回(下のやつ)の続きです。
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集合場所に近づいた時に、私が抱いた感想。
なんか、ちょっとした人だかりができてる……。
参加者たちはそれぞれスマホをいじくりながら、
小さな群れを形成していた。
想定通り男が多かったが私は安堵した。
そんなにクソちゃらい奴はいないじゃん!!
参加者の男性は、そのほとんどがどこにでもいる普通の学生だった。
むしろ地味目と言ってもいい。
さっきまではビビりまくっていた私だが、もはや
彼らがしょうもない性欲のために今夜3000円失う可哀想な人たちに見え始めていた。
「参加者の人は、名前確認しますんで、こっちに来てください!
その時にお支払いも一緒にお願いします^^」
調子にのる私。
皆から金を受け取るとき、不思議な高揚を覚えた。
さっきまで恐怖の対象だった存在が、私に金を払うために列を作っている。
つい昨日まで参加者のドタキャン率を仮定し、中心極限定理を根拠に収益が正規分布に従うとしたうえで、得られる金の1.96σ区間を計算していた私に、金を払うナンパマンたち。
その構図がどこか滑稽だった。
ぶっちゃけ、気持ちよかった。
たぶんこの時の私の表情は相当気持ち悪かったことだろう。
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この時の参加者は皆ふつうにいい人だった。
私とY君は、バーテン作業に慣れていないので、
リキュールと割り材がだいたい半々という酷いカクテルをたくさん作ったが、彼らは笑ってゆるしてくれた。
3000円払って食べられるのは、基本的にポップコーンか友達の家に置いてありそうなよくわからんチョコのみという酷いありさまだったが、誰も文句は言ってこなかった。
経費は限界まで、いや限界を超えて削りまくられていた。
おまけに男女比も酷いので、クレームが来てもおかしくない。
皆基本的に初対面なので、楽しめているかどうかは人によって結構差があったかもしれない。
一部、ひょうきんな奴が無理やり場を盛り上げているテーブルもあれば、葬式場と化しているテーブルもある。
後者には内心「スマン……」と思いつつも、カクテルを作る作業に追われて何もすることはできなかった。
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まあ、そんなこんなで終わってみれば結構楽しかった飲みサー開催であるが、
やはり一番高揚したのは収益の山分けである。
バーを片づけてオーナーに返却した後、二人で近くの吉野家に直行する私とY君。
私が持っている封筒には7万円程度が入っている訳であるが、
なにせほとんどが千円札なので、ずっしりとした姿は立派なものだった。
経費を差っ引くと、一人当たりの利益は1万円ちょっとに過ぎなかったが、
「他人に使われる」以外の方法で稼いだ金は、また特別なものだった。
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良い一日は帰り道でわかる。
あの日の帰り道の気分は最高だった。
新宿の汚れた空気に、どこか甘い感じすら覚えた。
参加者サイドからしてみれば、ほとんどインチキに近いようなクオリティだったかもしれない。
しかし、やってるサイドからするとこれが楽しいのである。
私は、文化祭をはじめとする学校行事に全く良い思い出がないサイドの人間である。
だが、普段は不真面目な連中が、文化祭になると途端に真剣になって準備への参加を強要するその心理状態がなんとなくわかった感じがした。
あの時余って持って帰ってきた鏡月は、まだ棚の奥にあっただろうか。
(終わり)